私の整体師としてのあり方を変えた一人のお客さま
妻の腰痛をきっかけに整体の勉強を始めた私にとって、
整体の仕事は体の痛みを取ることだと考えていました。
なので、来院されたお客さまには、痛みの状態をお聞きした上で体の歪みを検査し、 歪みを無くす施術をする。それで痛みが取れればOKと考えていました。
そんなときに、あるお客さま(Mさん)との出会いをきっかけに私の中で整体の仕事の意味が変わりました。
整体の仕事は、お客さまとそのご家族を幸せにできる仕事なんだと考えるようになりました。
Mさんは子供の頃に小児マヒにかかられたため、手足が少しご不自由な女性でした。
どこが特に痛いというのではなく、全身がカチカチに固まっていて、あちこちに不調を訴えられていました。
何度か整体をするうちに、体以外のことのお話もするようになりました。
「自分の体の不調のために家族に満足なことをしてあげられない。そんな自分に腹が立つし、家庭内もギクシャクしてしまう。それが辛い。」
何でも一人で抱え込んでしまう方でした。
少しでもお役に立てればと思い、Mさんの抱えている悩みをお聞きし、私なりの考えをお伝えしていました。
その後Mさんから、「体が楽になってきたので家族のこともできるようになった。また、色々聞いてもらったおかげで気持ちも楽になり、家族にやさしく接することができるようになり、家庭内も明るくなった。」と言われました。
そのとき私は、たかが整体師だけど、お客さまとそのご家族を少しは幸せにできる仕事なんだと考えるようになりました。
忙しいときは、施術をすることだけに集中しがちですが、このときの想いを忘れないようにしています。
お客さまから「話をしっかり聞いてくれる、分かるようにていねいに説明してくれる。」と言われるたびに、Mさんに感謝する毎日です。
数年前、そのMさんは病院の不適切、不要な治療で亡くなられてしまいました。
人生は悲しいことがいっぱいです。
でも、楽しいこともいっぱいだからがんばれます。